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7章:トパーズの言い伝え
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7章:トパーズの言い伝え
『―…ハアッ!ハァ…ク…クロ…待て……!』
クロは何の迷いもなく住宅街を疾風のごとく走りぬけ、
俺は必死に追って行く。
そして普段は閑静な住宅街なのだろうが、次第に人が出てきて皆、一点を見つめている。
…そう。
…クロが向かう先を。
…俺は嫌な胸騒ぎが確信になった。
人が集まり始まっているその目の前は…
…赤く
…赤く
一軒の家が…
…赤い炎に包まれていた。
玄関には、サッカーボールと真新しい緑のマウンテンバイク。
―…ドクンッ…―
喉の奥がカラカラに渇いて、胸が痛いほどに高鳴った。
炎に包まれた家のなかからは微かに子供の叫び声が聞こえて…!
俺はありったけの力を足に込めて残りの力を振り絞り炎に包まれて、赤黒くなっている扉に飛び込んだ―…!!
家のなかは赤黒い炎とどす黒い煙が充満していた。
俺は身を低くして、腕で口を覆うようにして…一歩…一歩と足を踏み入れた。
今までに経験したこともないような肌が焼ける暑さと息苦しさ、喉と目の痛み。
俺は意を決してありったけの声で叫んだ。
『―…りょうやぁぁァッっっッッ!!
…菜々美ぃぃィッッ!!』
…微かに上の方から声がした!
俺は炎のなかに突進して階段をかけ上った。
2階は炎より煙が充満している様子で真っ白で視界はほとんど見えなかった。
…煙でしみる目をなんとか開けて見ると、奥の部屋の入り口に…
…いた…!
菜々美が倒れていて、
菜々美の腕を引っ張るようにしてりょうやは壁にもたれかかっていた。
『―…ツッ…―!?』
『―…りょうやァッ?!菜々美イッ!』
俺の声にりょうやはピクッと反応したが意識はもう無いように力無く腕を微かに動かしただけだった。
『―…クソッ…!―』
俺は菜々美を背負い、りょうやを抱えなんとか外に出ようと足を踏みだした―…
その時…
壁の一部が炎で崩れ階段は完全に塞がれた。
『―…ッッ嘘だろ?!…クソッ!こんなとこで…!』
俺は煙の痛みと己の腑甲斐なさに涙が出てきた―…
『…まだ!俺は!何も!…菜々美にもりょうやにも!何もしてやれてねぇんだ!アァァ…!!―』
声にならない叫び声を上げたその時…―
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黒の扉 〜トパーズ〜 ©著者:金木犀
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