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6章:四つ葉のクローバー
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菜々美とりょうやは手を繋ぎながら、仲良く夜の街並を眺めている。
「ママ!あそこ僕の小学校が見えるよ!」
りょうやは菜々美の手を繋ぎながら身を乗り出すようにして指を差している。
「りょうクン。手摺り低いんだから気をつけてね…あっ!本当だぁ〜…まだ明かりがついてるね…まだ先生いるのかな?」
菜々美とりょうやはそんな他愛ない“母と子”の会話をしていた。
そんな会話を趣味悪く聞いていた俺は、ほとんど頭が混乱していた。
―…ッッ…りょうやはなんて言ってた…?…―
…涼哉…
…9才…
菜々美が俺の前から姿を消して10年…
りょうやの父親は…?
「…ねぇママ。僕ね今日、理科の時間に校庭で四つ葉のクローバー見つけたんだ!
先生と一緒に押し花にしたんだ…ハイッ!これプレゼント!」
りょうやは誇らしげに菜々美に手渡した。
菜々美は優しくりょうやをギュッと抱き締めた。
「…りょうクン。ありがとう…見つけるの大変だったでしょ?嬉しいなぁ。」
「ヘヘッ!ママ、四つ葉のクローバー好きだもんね?
…ずっと、その首飾り大切にしているもんね!」
菜々美はそっと首の辺りに手をやって小さくゆっくり頷いた。
しばらくして菜々美とりょうやは、ジャンケンをしながら階段を降りていった。
俺は木の影にしゃがみこみしばらく動けずにいた…。
…菜々美はなぜ10年前、急に姿を消した…?
…なぜいまだに俺があげたネックレスを身につけている…?
…子供の名前が俺と同じ名前なのは偶然…?
…菜々美…
…10年前にお前に渡せなかった…
…無くした夢を…
…渡したい…!
―…ニャァ…―
『―…クロ。俺…』
クロは俺を心配そうに左右違う瞳の色で見上げていたが急に…!
―…ピクッ!
と顔をあげて、そのピンとした形のイイ耳を動かして、忙しなく動き始めた。
『…どうした…クロ…?』
クロはそのしなやかな体を目一杯動かして走りだした。
俺は、訳も解らずクロの後を追って行った。
クロの今までに無い動きに俺は嫌な胸騒ぎを抱きながら…
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黒の扉 〜トパーズ〜 ©著者:金木犀
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