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2章:菜々美と言う女
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2章:菜々美と言う女
菜々美はそのはっきりとした性格と中学生離れした整った容姿で、良くも悪くも目立つ存在となった。
…まぁしかしそんな存在の女子はだいたい上級生の反感をかうものだった。
あの日は体育館での授業だったので渡り廊下を友達とふざけ合いながら移動している時だった。
「…なぁ、あれ、菜々美チャンじゃねぇ?」
見ると上級生の女子に連れられて菜々美が、視聴覚室に入って行くところだった。
『…本当だ…』
「なぁ。あれヤバイんじゃね?…いわゆるシメるってやつ?!」
友達数人はワイワイ騒いでいたが、後ろから体育教師に早く行けと促されてそのまま体育館に行くことになった。
しかし授業が始まると、俺はさっきの事が気になり、こっそり体育館を抜け出して視聴覚室へ向かった。
視聴覚室は防音設備がされており窓もなく、ドアが一つだけある造りになっている。
『…意外と仲良く話とかしてたらどうしよ。俺間抜けじゃん。』
俺がそーっとドアを開けると、菜々美の長い髪を上級生が掴みあげている所だった。
「…あんたさぁ。生意気なんだよ!…いい子チャンぶってんじゃねーよ!」
「…あなた達こそ、上級生なら上級生らしく常識と言うものを少しは知ったら?
…足の悪い下級生が階段を昇ろうとしているのを堂々と座り込んで退こうともしないで…
しかも笑うなんて!非常識にも程があるわ!」
上級生は顔を赤くしてさらに菜々美の襟元の制服も掴み上げて壁に押しつけはじめた。
それでも菜々美は怯むことなく上級生を睨み付けている。
俺はこれ以上見ていられないと思い、とりあえず壁に設置してある非常ベルを押した。
―…ジリリリリリリ…―
大音量の非常ベルに上級生の女子も菜々美も一斉に動きが止まり教室を見渡してやっと俺の存在に気付いた。
『…先輩方。出口一つしかないから早く逃げないと教師が来たら逃げらんないよ?』
俺がにやけながら言うと、上級生はビームが出るんじゃないかと言うくらいの睨みを俺に向けながら足早に出て行った。
残された菜々美は制服と髪の乱れを整えて改めて俺を見た。
「…ありがとう。」
意外にも素直に礼を言われたので俺はどぎまぎしてしまった。
『…べ…別に。つーかさぁ、お前もっと上手く生きられねーの?そんな波風ばっかり立てて疲れない?』
菜々美はその大きな瞳で俺を真っ直ぐ見つめた。
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黒の扉 〜トパーズ〜 ©著者:金木犀
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