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1章:転校生 (3/3)

―…プルルル…― 

不意に保健室の内線ベルが鳴った。 

「―…はい。保健室です。…はい。…はい。…わかりました。」

『なんかあったの?』

「来客。…ちゃんと教室戻るのよ?」

先生はそう言い残すと慌ただしく書類やらを手に持つと保健室を後にした。

俺は校庭で体育の授業であるバスケットボールをしている下級生の女子をニヤニヤして見ていると、奥のベッドを仕切るカーテンから声がした。 

「…先生?」

『…いないよ。来客で出かけていった。』

俺がカーテン越しに返事をすると、カーテンの開く音がして俺は振り返った。
声の主は見たことない顔の女子だった。 

(自慢じゃないが俺は全校の女子の顔は大体わかる。)

保健室の光を受けて長い髪は薄茶色に透けて見え、肌は真っ白だった。
そして意志の強そうな大きな瞳が印象的な女子だった。
…今まで女子は可愛いとしか連想したことが無かったが、この時始めて、女子を

“綺麗”

だと感じた。

『…もしかして、転校生?』

「…そうだけど。…あなたは?」

『俺?同じ学年の涼哉…名前なんてーの?』

「…菜々美。」

菜々美と名乗った転校生は遠慮無くジロジロと俺を見ると印象通りの綺麗な声で、

「…ダサい格好。


…顔はいいのに残念ね。」


と、言い放つとスタスタと歩いて保健室を出ていってしまった。
俺は強烈な一言に取り残され、
ただ1人ポカンとしていた。

…これが菜々美との初めての出会いだった。

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黒の扉 〜トパーズ〜 ©著者:金木犀

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