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2章:菜々美と言う女
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「私は…正しいと思った事をしただけ。波風なんて立ててるつもりない。」
『…そっか。…お前って良くも悪くも素直で真っ直ぐな性格なんだな。』
「…あなたも格好はダサいけど、
…意外と優しいとこあるんだね。」
『ダサいは余計だよ。』
「…カチューシャだけは取った方がいいとだけは教えてあげる…それと、お前って呼ぶのやめて。ちゃんと名前があるんだから。」
『わかったよ。菜々美チャン。俺も名前があるから名前で呼んでね。』
俺はニカッと笑うと、菜々美もつられて笑った。
そんな事があって(…俺は次の日からカチューシャをつけるのをやめた。)
俺達は顔を合わせれば話すようになり、次第に友達になっていった。
…でも、友達だと思っていたのは菜々美だけで俺はこの時から菜々美を意識していた。
そして中学3年になった春に俺は思い切ってデートに誘った。
「…お花見?」
『地元で祭りがあるんだ。桜並木に屋台も出るし、行かね?』
「…別にいいけど。…あと誰が来るの?」
『来ねーよ。2人だけだ。』
菜々美は思いもよらなかったのか俺の答えに言葉を詰まらせた。
『嫌なのかよ。』
「嫌じゃないけど…」
俺は菜々美の態度に軽く傷付き、一応ポケベルの番号と待ち合わせの時間と場所を書いたメモを強引に手渡して逃げるように自分のクラスに戻った。
当日。
俺はこの日の事ばかり考えて悶々とした数日を送っていたが、
…菜々美は来た。
制服じゃない菜々美を見たのは初めてで俺は少し浮かれていた。
『…な…なんだよ来ないかと思った。』
「…?…なんで?」
『あんま乗り気じゃなかったから。』
「そんな事ないし。
…ただ2人だけってのがちょっと…緊張するなって思っただけ。」
菜々美が緊張するなんて言うから俺は余計に意識してしまい、俺達はいつもとは違う雰囲気でぎこちなく桜並木を歩き始めた。
桜は見事に満開で風がふくと桜の花びらが舞い落ちてきて隣に歩いている菜々美がいっそう綺麗に見えた。
すると菜々美が急に、
「…あっ!ソースせんべい屋がある。
あれ買ってきていい?」
と、この雰囲気を変えようとしたのかいつものテンションを取り戻しながら言った。
『…つーか俺が今日は誘ったんだし俺が奢るよ。』
と、俺の申し出に菜々美はクルッと俺を振り返り、いたずらっぽい表情で言った。
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黒の扉 〜トパーズ〜 ©著者:金木犀
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