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3章:魔性の女 由羅
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3章:魔性の女 由羅
ようやくタクシーに乗り込んだ由羅は、島津に手を振って夜の街へ消えていった。
タクシーが見えなくなるまで手を振り続けた彼は、ガッツポーズを決めてスイートへ直行した。
一方、タクシーの中では…
由羅「運転手さん、田園調布じゃないわ!
麻布へ向かって!」
運転手「は? 良いのですか?」
由羅「いいから! 麻布よ!」
運転手「は、はい、かしこまりました。」
島津から田園調布までと頼まれていたベテラン運転手の男性は、戸惑いながらも麻布へ方向転換させた。
由羅「フン、ケチな男!
0.5カラットって私をバカにしているのかしら?」
後部座席で踏ん反り返る由羅は、ジュエリーケースの指輪を手に持ち、運転手に聞こえるように声を挙げた。
それを聞いた運転手が、ルームミラーでその様子を覗いて口を挟んだ。
運転手「婚約指輪ですか?
それだけでも充分に価値のある指輪だと思われますが。」
ルームミラーで幾度も彼女をチラ見した運転手は、何かを察したように彼女に尋ねた。
運転手「お客さん、一般人ではないですよね?
自分は都内でタクシー運転手を長年勤めておりますので、何人か有名な女優さんやモデルさんを乗せたこともありますよ。
お客さんはメディアでは拝見したことはないですが、同じオーラを背中から感じますな。」
この運転手の何気ない一言が、彼女の邪心に火を付けた。
由羅「フフ、そうかしら?
ところで運転手さん、お名前とお年を聞いていい?」
運転手「私ですか?
武市、武市半平太です。
今年で60になりました。
もうすぐ定年ですよ。」
由羅「半平太さんね。
長いお付き合いになるわよ。」
運転手「は、はい?
お付き合いと言われても…
照れちゃいますねぇ、あなたのようなお美しい方に言われると。」
由羅「フフフ…
ありがとう。
お世辞じゃないわよ。」
由羅は背後からルームミラーで運転手と目を合わせて、妖しく微笑んだ。
それに気付いた運転手は、顔を紅潮させてゴクリと唾を飲み込み、視線を逸らせた。
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三人の女豹女教師 ©著者:小島 優子
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