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7章:6
優の住む田舎にも
暑い夏がやって来た。
青い空は
ふかふかの絨毯のような入道雲を仲間に
どこまでもどこまでも広がっている。
ここの夏空は
他の空よりも高いんじゃないか
そんな事を感じながら
指を四角に組み合わせて
カメラマンの真似事をしてみる。
小さな指の窓から見る空は
優だけの空だ。
相棒の白い自転車に乗って
長い長い坂道を
風を切って走ると
夏の暑さも心地よい暑さに変わる。
しばらく走って
一番近い商店に着いたのは
優が家を出てから
30分の時間が経ってからだった。
『おばちゃーん
アイスちょうだーい。』
商店の中に向かって声を掛ける。
小気味の良い音を鳴らして
下駄を履いた
おばちゃんが出てきた。
『はいはい、100円ね。』
100円玉と今日畑で取れたトマトを渡し
店先のベンチに座りこむ。
優はここの商店の
おばちゃんと世間話をするのが
好きだった。
『優ちゃん
これ持っていきなー。
産みたての卵だよ。
今朝うちの鶏が生んだの。』
まだほんのり温かく感じる
新鮮な卵を5つ貰った。
まだまだこの地域では
物々交換が主流で
それは地域に住む人達の
コミュニケーションでもあった。
『おばちゃんありがとう』
満面の笑みでお礼を言う
優におばちゃんも嬉しそうだった。
しばらく世間話を楽しんで
また相棒に股がる。
『またねー!』とおばちゃんに
元気に声を掛けて
家路へと向かう。
長い長い坂道を
今度は相棒に乗ったり
疲れて降りて
相棒を押して歩いたりしながら帰る。
『行きは良いけど
やっぱり帰りは大変だぁ。』
ポツリとぼやきがらも
この坂道が大好きだと思うのだ。
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