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6章:遠回りして見つけたもの
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6章:遠回りして見つけたもの
おばあちゃんの家までの道のりはそれほど遠くないのだが、私はとても遠くに感じて足がうまく動かずもどかしい思いでなんとか、おばあちゃんの家の近くまでついた。
私は痛くなった横腹を擦りながら息を整えて歩みを遅めて、おばあちゃんの家の階段を上がろうとしたとき…後ろから声をかけられた。
「―…あなた…そこのお家になにか御用?」
私は足を止めて振り向くと以前、私がこの辺りをウロウロしている時に怪しんで私を見ていた近所のおばさんだった。
『―…あ。私、ここのおばあちゃんの知り合いで…』
おばさんは眉を潜めて考えるように私を見た。
「…たしか、静江さんの娘さんは若くして亡くなっているし…お孫さんはいないはずだし…」
『…いや…友達と言うか…お、おばあちゃんに聞けばわかります!…怪しいものではないです。』
おばさんはさらに顔を強ばらせて私を見た。
「…あなた何を言っているの…?
静江さんは…
半年以上前に、足を悪くしてそこの階段から落ちて…
亡くなっているのよ…?」
―…ドクンッ…―
『―…ッッ?え……?』
私の心臓が痛いくらいに高鳴って、私の耳のすぐ傍で誰かの声がした。
“―…金木犀の咲く時期は…夏の終りから…秋のはじめ…―”
“―…猫又は妖力が…―”
“―…幻覚を見せる…―”
私は後ろから聞こえてくる、おばさんの声を振り切って階段を掛け上った。
足が震えてうまく上れず、涙で視界が歪んだが…ここで立ち止まる事はできなかった。
いま、立ち止まったら…二度と…
―…私…おばあちゃんに話したいことまだいっぱいあるの…!
おばあちゃんに教えてもらいたいこともいっぱい…いっぱい…!…―
―…バタン!…―
『―…ッッ…おばあちゃんッッ!』
私は夜の暗闇で黒く染まっている家の扉を勢い良く開いた。
―…!?…―
そこはあの暖かな家とはまったく違う…
何もない…ただガランとした空き家だった…
私はその場で踵を返し、庭へと走った。
月明かりが注ぐその庭は、あの金木犀の木はオレンジ色の小さな花も付けずただ立っているだけで、あんなに色鮮やかな花々や野菜があった畑はただの荒れ地になっていた。
どこを探してもおばあちゃんの姿はいなく、
どこを探してもおばあちゃんと過ごしたあの暖かい場所は無くなっていた。
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黒の扉 〜金木犀〜 ©著者:金木犀
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