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6章:遠回りして見つけたもの
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私はその場に力なくヘタリと座り込み月を仰ぐように涙を流して、まるでおばあちゃんがそこにいるかのようにブツブツと話し始めた。
『…おばあちゃん…私ね…やっと見つけたの。
おばあちゃんのおかげで…おばあちゃんに出会えたから…やってみたいこと、なりたいもの…見つけられたの…。』
ポタポタとあとからあとから流れ出る涙は頬を伝って、乾いた土に落ちてそのまま吸い込まれていった。
まるで私の悲しみをも吸い込んでくれているようだった。
―…ニャァ〜…―
『…クロ…?!』
私は辺りを見渡した、しかし声はするがどこを探してもクロの姿は見つけられなかった。
それから数ヶ月が過ぎ…
私は、3年前に卒業した大学にいた。
久々に袖を通したスーツがとても着心地が悪くソワソワと教員室を見渡していると、在学中お世話になった先生が色々な資料や用紙を手に持って私の向かいのイスに座った。
「…だいたい、こんなもんかな。…ここなんかは、私の友人がいるんだ。
とても実習的なカリキュラムでみっちり勉強できるよ。」
先生は相変わらず白衣を着て優しく穏やかな口調で、福祉の専門学校の資料なんかを説明してくれた。
「…しかし、嬉しいよ。
きみは在学中、就職にも勉学にもあまり熱心ではなかったのに…
遠回りしながら自分のやりたい事を見つけられたんだね…。」
先生は本当に嬉しそうに笑っていた。
『はい。先生。ありがとうございます。』
私は先生の紹介もあって専門学校に入学することに決め、来年の春に向けて福祉の勉強をはじめた。
『…おはようございます』
今年いっぱいで辞めると決めたこのお店もなんだか少しだけ寂しい気持ちもあったが、もっと寂しいのは仲の良かった愛チャンと瑞希チャンが使っていたロッカーは、もう違う女の子が使っていた。
今日もお店は混んで、その中には馴染みのヒロくんの姿もあった。
『ひろクン。今日もありがとう。』
私は慣れた手つきで水割りを作り、自分はカシスオレンジをボーイに頼んだ。
「…そう言えば来月だね。…愛ちゃんの結婚式。」
『うん!楽しみだなぁ〜何着ていこうかな〜!』
私はあれこれとドレスの提案を話していると、ひろクンは眼鏡を手で押さえ、私に背を向けて肩を揺らしていた。
「…愛ちゃんの結婚式のブーケを必死で取ろうとする、明日美チャンの姿が目に浮かぶよ。」
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黒の扉 〜金木犀〜 ©著者:金木犀
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