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3章:懐かしい者
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3章:懐かしい者
放火魔の事件から平和な日々が続いた。
それと同時に彼が姿を見せる事も無かった。
家を出て学校に行き、バイトの日以外は
最愛の彼女、茜と会う日々。
月平均20日は出勤していたので
学生としては多い金額を毎月もらっている。
そのうちほとんどを母に渡し、
携帯代と遊ぶ金は残りから工面した。
生活も大幅に楽になり、学業にも集中し、
あっという間に高校時代も2年が過ぎた。
俺はバイト先である工場に就職を考え、
不気味なくらいにあらゆる事が
順調に進んでいった。
何の気無しに路地の空き地に足を運ぶ。
今があるのは間違いなく、あの少年と
あの時出会ったのがきっかけだ。
最後に姿を見たのはこの空き地。
中に入り、辺りを調べる。
誰かが忘れていったのだろう、
プラスチック製の宝箱が一つ、
空き地の隅に転がっていた。
大分腐っていたが、中身は無事のようだ。
野球のボール、落書き帳、ヨーヨー、
パチンコ、おはじき、古い帽子…
…………!
間違いない。少年が被っていた帽子だ。
それを拾い上げ、内側のラベルを見る。
『新藤 優』
そこに油性マジックで書かれた名前。
辛うじて読める程度残っているが
かなりの年月が経っている。
どう見ても2年の経過どころではない。
少し迷ったが、持ち帰ることにした。
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