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16章:守りたいもの
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しばらく無傷で出勤できる日々が続いた。
その日は及川くんは先に仕事から帰り、早番で出勤した私は及川くんに遅れること2時間ほどで帰宅した。
「ただいま…」
いつも玄関まで出迎えてくれる猫が今日は出てこない。
…?なんで?
廊下のクローゼットの扉は半開き…しかも中はめちゃくちゃだった。
違和感を感じながら廊下を抜けて部屋に向かう。
猫は…キッチンの隅で見たこともないほどブルブルと震えて縮こまっていた。
私が手を伸ばすと、猫はさらに隅に身を寄せるようにしてシャーッと牙をむいた。
そこここににおもらしと脱糞の跡があり、床には壊れたプラスチックのハンガーが転がっていた。
私のいない間に何があったんだろう…
部屋には及川くんがいた。
「おかえり…」
「何かあった?」
「猫がクローゼットの中に入って出てこないからさ…ハンガーで猫を引っ張りだそうとしたんだけど、ハンガーはその時扉に挟まって壊れちゃって…」
早口でまくしたてる及川くん。
私は黙って聞きながらも、それ以上の何かがあったような気がしてならなかった。
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