13章:古い傷 (2/7)

ある日、私は渋谷のホテル街をペリカンに向かって歩いていた。
ペリカンは、広いけれど地味で暗いラブホ。
ペリカンの陰鬱な雰囲気がどうしても好きになれない。
しかも一番安い企画。
やる気は全く起きなかった。


けれど、ドアを開けてくれたのは、ＤＣもペリカンも似合わない自分と同じ年頃のお客さんだった。


セックスが上手だった。


「セックス、上手なんだね」
本心が口をついて出た。


「女に浮気されないようにセックス上手くなろうと思って」


…笑ってしまった。
浮気ってそういう理由でする人ばかりじゃないと思うけど。


だけど彼のセックスは少し変わっていて素敵だった。


またしたいな…と思った。


初めて、お客さんとして知り合った人と連絡先を交換した。