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12章:精神的依存
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心の支えも拠り所もなかった。
あるのはただ薬にまみれたこの体。
この頃から、仕事中も薬を持ち歩くようになっていた。
そうしなければ途中で薬が抜けてきて体力が続かないからだ。
……イヤ、違うかな。
「体力が続かないと思い込んでる」から。
シャブを打ち、4時間も経つと気持ちがソワソワしてきて、身体中が重くなる。
打たなきゃ…なんて一度でも頭に浮かんだら、もう準備に取りかかる。
シャブ1回分の入った注射器を隠し持って洗面所に行く。
バレないようにやるコツは細切れに準備すること。
水を入れる、溶かす、打つ、これを全部まとめてやろうとすると、
「トイレ長くない?」
という事になる。
DC業界も薬物汚染は甚だしい。
事務所の壁にも『薬物厳禁!』なんて貼り紙がしてある。
例え時間にルーズでも、下半身が常に臨戦体制でも、決定的な証拠だけは残してはいけない。
トイレの長い、挙動不審な同僚の女の子を見ていて学ぶ事は多かった。
とにかく…私はもう精神的依存の極みに達していた。
私を頼ってくれるのは、ただ一匹の猫だけだった。
薬をやらない友達との付き合いは意識して絶っていた。
もう、何の喜びも楽しみもなかった。
どん詰まりの生活。
自力で抜け出すならきっとこの時だった。
だけど…私は、何もしようとしなかった。
八方塞がりの毎日をただいたずらに生きていただけだった。
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