冬が終わり、春が近づいてきてきた頃だった。

「ツネが居なくなった」

遊廓内が大騒ぎになった。

ツネとは太夫の一人だった。

彼女も美しく、教養を兼ね備えた最高級の遊女だった。

彼女が以前から「早くここから出たい」と漏らしているのを周囲の人間は聞いていた。

ヨネとツネは友人であり、良きライバルでもあった。