私立大学の雄早応大学直属の学園に相応しく、校舎は壮大で、万全に整備された広大なテニスコートを挟んで二棟の校舎が立ち並ぶ。

西側に位置するＡ棟は、スポーツ推薦で入学した生徒を対象に、体育学科を専門とした授業やトレーニングが行なわれる、スポーツの棟。

そして東側のB棟が、普通科やエスカレーター式で早応大学への入学を目指す進学コースの他、ハイグレードな国立大学に的を絞った特進クラスも収容する通称学問の棟である。

体育科に所属する島津は、A棟に拠点を構えて、主にプロスポーツ選手を育成する講義や実習を受け持っている。

正門からスタートした島津御一行は、始めにA棟から見学し、最後はB棟の最上階に位置する理事長室で、理事長や校長、教頭と面会することになる。

ツアーの団体客のように、島津に率いられた新任教師達は、教室やそれぞれの設備について解説されながら歩き回った。

廊下では朝練を終えた生徒と幾度となくすれ違い、元気な挨拶が飛び交う。

元気よく声を挙げる彼等の制服は、ベージュのジャケットにストライプのネクタイ、男子はグレーのワンタックのスラックスに、女子は膝上丈のスカートと、校則で規定されたものをきちんと着用していた。