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9章:†Smile for me†
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篠崎先生のテーブルには、オードブルとキッズディッシュが届いた。
脂っこい料理のキッズディッシュなので、まだ、1歳半にも満たない子には、キツいと思ったけど、ちゃんと、彼女の前にお皿が置かれ、まだ小さいのに、フォークを握ってる。
葵先生が、彼女の口に、料理を入れていた。
近くに行った。
『みゆ、大きいお口開けて!』
葵先生が、ハンバーグを口にいれた。
『水飲むか?』
篠崎先生が、水を飲ませた。
『だめよ、パパ。
お水でお腹が膨れちゃうわ』
『あ、そっか。
じゃ、今度はパパが食べさせてやろう。
ママ、オードブルを食べなさい、全然食べてないじゃないか?』
実柚菜ちゃんが産まれる迄、2人は、お互いの名前を呼んでいた。
でも、その前は〇〇先生だった。
実柚菜ちゃんが産まれた事で、パパとママになった。
2人とも、優しい眼差しで実柚菜ちゃんを見つめてる。
料理を口に入れる時も、飲み物を口にする時も。
フォークは持つけど、まだ、半分は手掴みになる彼女の手を、時々拭いてやりながら、篠崎先生と葵先生は、優しく実柚菜ちゃんを見つめ、そしてお互いに見つめ合う。
翔の赤ちゃん……
この時、無性にそう思った。
この先生達だけじゃなくて、こんな親子の姿なんて、あちこちで見てるのに、でも、何故か強くそう思った。
翔が居て、真向かいの席に私が居て。
その間に、私が産んだ翔の赤ちゃんが居て。
私もきっと、翔の事をパパって呼んでるのかも。
そして、私もママって呼ばれてるかも。
りぃは、母ちゃんになる。
そう翔が言った。
確かに、お母さん役にはなれるかも知れないけど、でも、お母さんにはなれないよ。
だって、もう翔は居ないんだもん。
〔りぃ、泣くな〕
そんな翔の声が聞こえた。
ふと、一番奥の、翔と流矢の為の小さなテーブルを見る。
2人が居た。
だから、お冷やとお絞りを届けた。
〔ご注文は?〕
〔りぃの笑顔〕
翔が言った。
〔翔の奴、ずっとお前の事ばかり、心配してるぞ〕
と流矢が言った。
〔りぃ、開店おめでとう。
俺の気持ちを継いでくれて、ありがとう。
これからだ。
琉斗だけじゃないからな。
お前は、母ちゃんになるんだ。
俺は、ずっと傍でお前を見てる。
だから、泣くな。
りぃ、俺の為に笑え。
笑顔が一番お前らしい〕
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