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3章:赤信号 (2/32)

高校時の修学旅行以来だ。


私は大好きな作家、“宮沢賢治”の生涯が展示された、花巻市胡四王山(こしおうざん)に在る記念館を訪れた。

生誕120年を機に特別展が開催され、〈雨ニモマケズ〉が書かれた賢治自筆の手帳や、高村光太郎が揮毫(きごう)した〈雨ニモマケズ〉の詩碑原文が展示されている。

盛岡市の取引先で打ち合わせを済ませ、そのまま一日休暇を取って足を伸ばしたのだ。


賢治は仏教信仰と農民生活に基づいた創作を行い、創作作品中に登場する架空の理想郷に、岩手をモチーフとしてイーハトーブと名付けて想いを馳せる。

1921年(大正10年)から1926年(大正15年)まで稗貫(ひえぬき)農学校(のちに花巻農学校、現花巻農業高等学校)教師となり、教鞭を振るった。


展示室の中には、その当時の様子を再現した部屋があり、黒板には地質学で教える断層がチョークで描かれ、その隅には『下ノ畑ニオリマス』と記されて、農業振興を願った彼の姿が眼に浮かぶ。


本当にまだ、現在も賢治が農作業をしている様で、高校生の時は、友達と“下ノ畑”なる場所を探したものだ。


もちろん存在はしていないのだが。



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東京ショートストーリー ©著者:七斗

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