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2章:花嫁の左手
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彼女は“孤高の麗人”であった。
まだ二十代後半であるのに、先輩たちよりキャリアを積んできたがごとく、与えられた仕事に即座に反応し、先を読んで気を配る。
一を言えば十を知る態で、周りを驚かせた。
それに加え、華奢で小柄ではあるが、整った目鼻立ちにすっきりとしたフェイスライン、ナチュラルなメイクに黒眼勝ちの瞳が愛らしい。
マスメディア業界の裏方職という仕事柄、女優と同じフロアに並んで立っていても、どちらがタレントなのか分からぬオーラを放つ。
“優秀且つ秀麗なビジュアル”を持つ麻由(まゆ)。
老若男女、彼女と関わる全てのひとが少なからず興味を寄せていた。
しかし本人は至って“美という武器”を全く意識もせず、ただただ仕事に邁進(まいしん)する。
それは時として近寄りがたい雰囲気を醸し出し、無口で己を語らぬ性格と相まって、“孤高のエリアの中に潜んでいる”という風であった。
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東京ショートストーリー ©著者:七斗
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