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2章:花嫁の左手
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それでも彼女に憧れ、或いは胸をときめかせ、はたまたあわよくば一夜を……といった輩(やから)たちが懸命にアプローチを繰り返すのだが、ことごとく玉砕をして散っていた。
私はそんな彼女に現場の仕事をお願いをする小さな制作会社に勤めている。
縁あって麻由と知り合い、数年のお付き合いの中、少し年上の私には、次第に親しげな笑顔を見せてくれるようになった。
食事に誘うと、二つ返事で承諾を得られ、よく会社近くのワインバーでピザや生ハムを肴に語り合った。
「ちょっと酔ったから聞くんだけど、麻由ちゃんさぁ、身持ちが堅いよね。彼氏つくらないの? 男たちはみんなあなたに憧れてるよ」
「つくらないって訳じゃないんですけど……結婚もしたいですし」
「うんうん、それで?」
「なにか……こう、ぎゅって来るインスピレーションを感じる男性と知り合えなくて」
「ふ〜ん。どんなひとならぎゅって来るの?」
「う〜ん……坂本さんは、結婚なさってますよね?」
「え、私? うん、まあね」
「なぜ、ご主人を選ばれたんですか?」
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