『ジーク！
ハッピーバースデイ！』

この日、少年は16歳の誕生日を迎えた。

『うわ、ビックリした！』

『あははっ！やだジークったら！
本気で驚いてる！』

『サプライズ大成功だな！』

放課後にざわめく教室。
日頃親しい同級生達に囲まれて、
晴れやかな日の祝いついでにからかわれている。

大きな破裂音と共に派手に飛び散った、幾つかのクラッカー。

計画通りにテープまみれになって、何事かと目を白黒させる少年は、焦げ臭い火薬の様な匂い立ち込める学び舎の中央でキョトンと立ち尽くす。

『そりゃ驚くに決まってんだろ！？
寿命が縮んだぜ！』

『明日から旅立つ勇者様が
フラッシュモブのクラッカーくらいでビビってどうするの！』

『いくら勇者だろーがこんなもんビックリするわーっ！』

『剣術も魔術も落ちこぼれのお前が勇者の血を引く子孫だもんなぁ…せいぜい生きて帰ってこいよ？』

『わかってら』

『一足先に卒業かぁ…寂しくなるね…』

『なんだよリリア、俺の事好きだったの？』

『なっ…何言ってんの！？
自意識過剰ーっ！』

『またまた赤面しちゃって…
まんざらでもねぇんじゃねーの？』

『…余裕だな、お前』