中学生のころ。
ちゃんとした初恋は彼だと思う。

足が速くて、勉強もそこそこ出来る男の子の事を好きになった。

同じクラスで隣の席の彼だった。

授業中にノートの小さな切れ端で手紙をやりとりをする。
彼の手紙が私の机に届くたびに胸が高鳴ったのをよく覚えている。

そして、何通かやり取りをしている中で


【奥村って好きなやついるの？】


と小さな文字が目に入った。
大きく鳴った心臓に気付かれないように、


【いるよ。】

【だれ？】

【そっちは？いるの？】

【いるよ。】


その時、彼は同じクラスのりかちゃんが好きだと噂になっていた為、私は沈んだ気持ちになった。


【私、好きな人知ってるよ。】

【知らんでしょ。】

【りかちゃん】

【違うし。】

【噂になってるじゃん。私はだれにも言わないよ。】

【俺、奥村が好きなんだけど。】



漫画みたいな展開に、漫画みたいなリアクションとして。
私は持っていたシャーペンを落とした。




初めての両想い。
簡単にあっけなく、あのときめきが嘘のように。

すぐに終わった恋愛だった。

いや、恋愛と呼ぶにはふさわしくなかったなと。

今はそう思う。