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9章:†風になりたい†
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上りは私が先行だったから、下りはレビンが先行。
始めの内は、少し車間距離を取った。
〔ブレーキに頼り過ぎ〕
蓮に言われた。
前のレビンもよくブレーキを踏む。必要無いじゃん。シフト落とせば済む。
左のヘアピン。
〔立て直し〕
そっか、このタイミングじゃ遅いんだ。
〔先を考え無い〕?
考えて無い。この先すぐに、逆方向だっけ。
〔立て直し〕
もっと早くて良かったんだ。
〔コーナーの特徴〕
このカーブ、アウトに出なくてもそのまま行ける。でも、次はダメ。
木が邪魔して急に見えなくなる。
トンネルを抜ける。すぐに右カーブ。
左ヘアピンを過ぎたら急に狭くなる。刺すならこの次だ。
私はレビンにギリギリ近づいた。そして、コーナーのかなり手前でシフトを落とす。レビンがシフトチェンジした。アウトに出る。今だ!
一瞬、2台の車が斜めに横に並ぶ。スキール音がハモってる。すぐにハンドルを戻し、そのまま一気に加速した。
500mの蛇行。シフトをトップに入れる。勾配が少ない。クネクネ道は裏山で馴れてる。出来るだけ直線に近いラインで走る。
柏木は、此処で仕掛けるつもりなのか?ヤケに張り付いてる。
でも譲らないよ!
楽しくなって来た。
その時、何処かから
〔風になって〕
そう声が聞こえて来た。
流矢だ!
〔此処抜けたコーナーは、アウトに出たらすぐに真っすぐ突っ込んで!〕
やっばり流矢だ!
後輪が流れてる!
え?!岩肌にぶつかるかも!
〔大丈夫!ブレーキ要らない!〕
ギリギリだった。後一瞬立て直しが遅れてたら、完全に突っ込んでた。
〔大丈夫、俺が居るから。風になって〕
と、すぐに辺りが霧に包まれた。
霧の中の運転は馴れてる。
私のホームとする裏山一体には、ダムが在り渓流も沢山在るせいか、よく霧が発生する。
フォグを点ける。
〔次、右だよ〕
また聞こえる!
〔左のヘアピン〕
〔アウトに出ないで!〕
流矢の声。フルートの様な、柔らかい声。
〔あと三つ〕
そして、バトルは終了した。
〔きっと風になれるよ〕
霧の中、流矢の笑顔が在った。
レビンと、そして翔達も来た。
〔ありがとう〕
そう流矢に言った。
〔またね〕
と流矢が返した。
風になりたい!
心からそう思った。
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