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9章:†風になりたい†
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ファミレス。地元にも在る。同じ造りで、同じユニフォームのスタッフ。
そして、当然メニューも同じ。
『取り敢えず珈琲四つね』
と、お冷やを並べ終わったスタッフに翔が言った。
『ネ、あんた凄いじゃない!あんな所、よく思い切ってアウトから抜いたわね!』
ん?何の話だ?
『うん、あの人絶対進行方向以外目に入ってねぇもんな』
と凪。
『ラインも何も無い人だから、もう俺生きた心地しなかった』
と翔。
『ね、何の事?』
このままでは、話に参加出来そうに無いので、聞いてみた。
すると
『お前の走り方が如何に目茶苦茶か、について話してるんだ』
と翔が言った。
『失礼します。珈琲お待たせしました』
と言って、スタッフが各自の前に珈琲を置く。
『あ、飯の注文良いですか?』
と翔。
みんな即決。
だから、私も適当なランチにした。
『ね、一つ聞いていい?』
スタッフが去った後、隣の蓮と相向かいの翔と凪の顔を見た。
『どうしてあの峠に行く事にしたの?』
そもそも、私にしたらお化け屋敷以外の何物でも無い。
『あの峠、最初に行こうって言ったのは流矢だったんだ』
と凪が言った。
『流矢さん、あの世の世界の分からない人?』
と聞いた。分からなければ実に走りやすい、風光明媚な大自然満載の場所。
『いや、奴何度も臨床体験してて、離脱も何度か体験してたり、とにかく霊感って言うか、そっち系強くて』
と凪。
『まぁ、家系じゃね?』
と翔が言った。
『家系?』
『うん、多分ね。親父さんの実家もお袋さんの実家も神社なんだよ』
凄い家系。
『お袋さんちは、金井町のあのちょっと山に入って行った所』
知ってる。
あそこ、禊(みそぎ)教らしい。
『で、親父さんの実家は、島田町の月島神社』
ありゃま!生粋じゃん。
『んで、良くあの峠に入れたよね』
と聞いた。
『うん、あそこに呼ばれたって。夢にあそこが出て来たんだって』
と凪。
『あそこってさ、樹海だからな』
と翔。
だから、怖いんじゃない!
『ね、あそこ全部がヤバいよ』
と言った。本当に色々有り過ぎ。
そもそも、峠や山には神社が在る。不動尊。通称お不動さん。
でも、それが無い!
お寺も無い!
家の裏山でさえちゃんと在るのに。
だから、空気が違う。
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