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8章:†恐怖の矛先†
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【あざみ野峠】
正直好きな場所じゃない。今でこそ、綺麗な観光地となってるが、初めてこの峠に入った時、無理かも!そう思った。
全く手付かずの様な原生林が、道の両側に広がる。
全体が高台の様な場所なので、急勾配も無く、従ってヘアピンも少ない。
ただ、国有地らしいのだが、枝葉の手入れは全然出来てなくて、辛うじてアスファルトになってる様な道路も、その淵はガタガタだった。
何よりも、空気だ。
確かに、何も無い峠は無いと言っても過言ではないが、それにしても、有り過ぎる。
この原生林は、一体何人の方々がさ迷い続けてるのだろう。
コーナーに入る度に、見たくないがどうしても、その原生林が視界に入る。
そして、ただ、ボーッと道を見つめる影を、幾つも見た。
あそこにも、そして、今も。
確かに、此処ならば発見されるのにも、時間は掛かりそうだった。
道は狭かった。
凪は、ある程度の道幅が在るかの様な事を言っていた。
確かに、私がホームとしてる裏山や、赤城の北面よりはマシかも知れなかったが、それにしても、アスファルトの状態が悪過ぎる。
それでも、ドリフトらしきタイヤ痕を幾つも見つけた。
翔は同じ様なスピードで、ただ、流してる。翔は気づかないのだろうか?
林の奥の方へ目をやる。
わざわざ見るつもりは無いが、視線と言うか、どうしても、人の気配の様な物を感じてしまう。
しかも、これだけ鬱蒼と木々が生い茂って居るのに、野生の鹿も何も見なかった。
この原生林は、死んでるんだ。
そう思った。
いや、死んでいるのでは無く、死を生み出してる。
そう思っていたその時、コンポから流れてた音が消えた。
そして、次のコーナーを過ぎた時に、コンポのスピーカーから、確実に人の声が聞こえて来た。
それは、唸り声の様にも聞こえ、取り方によっては、愉快に笑ってるかの様にも聞こえる。
私は怖くなって、コンポのスイッチを落とした。
でも、周囲の空気も気配も、相変わらず変わらない。
やがて、先行するZがコーナーに消える。そのコーナーに差し掛かると、Zがそこで停まってた。
翔はZから降りると、道路から雑木林に足を踏み入れた。
何かを見つけたのだろうか?
この峠、山鳥の声も聞こえて来ない。
本当に死んでる様な感じがした。
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