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1章:†PROLOGUE† (2/2)

少しだけ、翔が大人に思えた。

少しだけ、翔が優しく思えた。

私の知らない世界を、もう既に垣間見て居るかの様に、翔は遠い目をする。

眼下には深い谷間のジオラマが広がる。

『なぁ、もし今あの中の誰かがこの世から消えたとして、一体俺達に何の影響が有ると思う?』

その問いに、答えを見つける事は出来ない。

一つの命が消える事が、どれだけの重さを秘めてるのか、それを言葉に委ねるのはあまりにも軽率に思える。

『お前、解ってるんだろ?』

答える代わりに、缶珈琲を口に入れた。

『逃げる事はしたく無い。どうせなら、花道を飾ってみたいんだ』

もう、覚悟が出来てるのか。

『私が一生忘れられない様に、いっぱい聞かせて』

霧が出て来た。

軽やかに通り過ぎていた風が、そのシフトを落とす。

眼下のジオラマは、徐々に白いヴェールを重ね、その姿を覆い隠す。

肩に掛けていた革ジャンに、結露が纏わり付く。

『お前になら、いつでも聞かせてやれるさ』

そうかも知れない。

『そっか、走り続けるんだもんね』

缶珈琲はもう空なのに、何と無く飲む振りをしてみた。

視界がぼやけてる。霧のせいだ。そう、霧のせい。

『お前、何故走るんだ?』

何故だろう。

『俺はさ、ただ風になりたかったんだ。いつか疾風になってやる!そう思ってた』

『もう充分なってるじゃん』

翔は、フッと冷めた様に笑い

『これからなるのさ』

そうかもね。そうなんだね。

私も付き合うよ、あんたの花道に。

そう決めた。

そう決めたら、少し視界がハッキリして来た。

『お前をナンパしたのって正解だったのかもな』

と笑う。

『うん、ナンパされたのは正解だったのかもね』

と釣られて笑う。

『約束だ、お前絶対事故るなよ』

『そんなの無理だよ』

『お前の助手席に俺が居る、ナビは任せろよ』

と言って笑った。

展望台の下から、爆音が聞こえて来た。

パールピンクのセダンが霧で霞む。その隣には、赤く四角いテールが二つ、白い世界に浮かんでる。

『そろそろ行くか!』

翔がそう言って階段を下りる。

私も翔の後に続く。

Zとミラノに分かれ、エンジンを掛ける。Zのリトラクティブが上がる。

先頭は翔のZ、次が私のミラノ、蓮のシルビア、凪のCR-X。

何時もの車列で霧の峠を下って行く。
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Skyline ©著者:Jude(ユダ)

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