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8章:〜空き部屋〜 (9/9)

キラ!

そう、それは紛れも無く、昼間お祭り会場に居た、あのキラだ!

私は頭の中が真っ白になった。そして、弾き馴れた曲は、やがて機械的に終わった。すると、そのキラも黒い譜面台の奥の方に吸い込まれて行った。

一体何だったのだろう……

私はその後、自分が何をどう弾いていたのか、全く記憶に無いが、とにかく表面上は熟してたのか、最後の曲が終了すると英里子が近づいてきて

『お疲れ様』

と声を掛けた。

ピアノの蓋を閉じ、一礼し、みんなの居るテーブルに戻ろうとしてそちらに目をやると、キラとみんなが私を見てる。みんなも、そしてキラも、いつもと変わらない、明るい笑顔だった。

でも、神埼には何かが解ったのか、奥側の席で真顔のまま私を見つめてた。

私はキラの傍に行くのを躊躇われた。が、しかしキラを避ける理由も無い。複雑な心境だった。取り敢えずテーブルに近づく。

『お疲れ〜』

キラとみんなに笑顔で迎えられる。神崎はただ、真顔で真っすぐ私を見てる。しかし、この恐怖は神崎にしか理解されないだろうし、勿論、キラ本人だって全く知らないのだから、どうにかして取り繕うしかない。

『ありがとう、みんなお腹空いちゃったでしょ?』

と言ってテーブルの上のオードブルの皿に目をやると、もう殆ど空。

『いや、適当に摘んでたし』

とキラが言った。

『じゃ、ちょっと着替えて来るね』

そう断って、更衣室に向かった。

更衣室に行くと、英里子の部下の里美が、ちょうど掃除をしていた。

『あ、お疲れ様です』

そう私が声を掛けると、しゃがんでごみ箱の内袋の口を縛っていた里美が振り返って

『お疲れ様ですぅ〜』

と笑顔を見せた。

『今日忙しかったのに、ごめんなさい、友達連れ込んじゃって』

と言うと里美は

『返って動かないで居てくれるテーブルがあった方が楽なのよ』

と言った。確かに、彼女にしてみれば、店の売り上げがどうであれ、給料は変わらない。

私はドレスをワンピースに、パンプスをローヒールに履き変えると、チラっとドレッサーに目をやった。ドレッサーは里美の手によってピカピカにされ、そして三面鏡は、鎮かに閉じられている。

この鏡の奥底に、一体どの位の部屋が在り、どの位の存在が潜んでいるのだろうか ――
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鏡からの使者 ©著者:Jude(ユダ)

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