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5章:〜神崎 竜司〜 (7/7)

神崎竜司、彼はまるで地に足を着けて無いかの様な軽い足取りで珈琲屋台のテーブルに近づくと、木の葉がそっと舞落ちるかの様にフワッと椅子掛けた。

『さ、こちらに』

そう促されると、私は何故か機械的に、その神崎の真向かいの席に腰掛けた。

すると、屋台からお祭りスタッフのユニフォーム姿の男性が近づいて来る。商店会の人は皆この姿なのかも知れない。

『ブレンドを二つ』

神崎がそう言った。

『昨日のあの名刺、何か気づかれたみたいですね』

私は、柔和な笑みを絶やさない彼に、あのピエロの顔を重ねていた。

さすがに、私の見た夢迄は解らないらしい。

神崎の笑顔は一向に変わらない。勿論、眼差しも柔らかい。冷静になって良く見れば、ジャニーズ系とも言える。

あれはやはり夢だったのだ。
昨日は疲れていたし、いきなりこの不思議な力のある神崎と遭遇し、キャパを越えた。疑問が不審に、そして恐怖へと移行した。そう言う事なのか?

『やっとご理解頂けましたか?』

やはり、私の思う処は、神崎に通じてる。

『私もあなたも、同じ力の持ち合わせがある。相通じるのは当然の事なのです』

相通じる?違う、私には全く解らない。一方通行だ。

『大丈夫、その内直ぐに、あなたも私が解る様になりますから』

と言う事は、また会うと言う事なのか?

『はい。夕べ申し上げましたよね?あなたの演奏を拝聴したいと』

そうだった。勿論来るなとは言えない。客は客なのだから。

『毛嫌いなさらないで下さい』

神崎の笑顔が淋しそうになる。

『はい、お待たせしました』

珈琲が運ばれてきた。

『煎れたてを頂きましょうか』

神崎は、上品な手つきでカップを持つと、ブラックのまま一口飲んだ。

『実に美味しい!』

そう感嘆の声を上げる。

私もブラックのまま、一口飲んだ。大学の傍に在る、行きつけの喫茶店とはまた違う、独自の深い薫りが、口いっぱいに広がった。

珈琲の薫りがきっかけにでもなったのだろうか。目の前の神崎に対する警戒心が、少しずつ解れて行くのを感じる。

〔なんでやねん?!〕

初めてステージの声が、言葉として耳に入り、観客の笑い声と一致した。

私は膝の上の名刺をテーブルに置くと、神崎の方へ向けた。神崎は鉛筆で汚れたその名刺を見ながら『なるほど』そう感心した様に言うと、上目遣いに悪戯な笑顔になった。
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鏡からの使者 ©著者:Jude(ユダ)

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