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11章:10 (1/6)

11章:10

優は納戸の荷物を
片っ端からひっくり返し
ある何かを探していた。


『あった!良かったぁ。』


納戸は足の踏み場も無い程
散らかってしまったが
見つけられたある物を眺めて
満足そうに頷いた。


居間に居る健児に
分厚い本を10冊渡す。


優が健児に渡したあるもの。
それは漫画仕立てで出来ている
【日本の歴史】
全10巻で構成されているそれは
小学校入学に合わせ
両親が解り易く歴史を勉強出来たらと
プレゼントしてくれた物だった。
両親がくれた物と言う理由で
捨てられずにいたのだ。


『健児さん、
これ日本の歴史。
貴方の言ってるその時代の事も
書いてあると思うから
読んでみてください。』


健児は
一巻一巻丁寧に読んでいた。
納得いかなかったり
よく内容が解らない所は
何度も読み返したり
優に質問したりしていた。


本人は気が付いてないだろうが
本を読みながら見せる
ころころと変わる表情が
優には面白かった。


驚いたり悲しんだり笑っていたり
意外と健児は
表情豊かな男の様だ。


やがて全て読み終わり
思い詰めた顔で沈黙していた。


そして口を開いた。


『優さん、この戦争で日本は負ける。
それは解りました。
どうやらここは…
自分の知らない未来の様です。
未来に来てしまった。
とても信じがたいけど、そう思います。』


『自分は
何かのきっかけで
この平成に来てしまったのでは
ないでしょうか?』
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飛行機雲 ©著者:ましろ

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