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2章:雨の夢 (34/34)

「雨降り小僧…なんだ」

泪はそう言うと、ゆっくりとキャスケットを脱いだ。
瞬き一つする間に、泪の姿は変わっていた。

胸元まで番傘に包まれた、着流し姿。
傘は二節ぐらい裂けていて、そこから青い髪と青い瞳が覗く。

「だからね、雨…あんまり嫌いにならないで」

カランと下駄が鳴って、泪はまた隣に座った。

「真実ちゃんなら、雨に負けたりしないでしょ…もう」

泪。
雨の妖怪。

大嫌いだった雨。

でも泪が。
雨が。

全てを流してくれたから。

「嫌いじゃないよ」

見方が変わった。
泪のお陰で。

「…良かった」

私は立ち上がり、店を出る。

嫌いなものも、憎らしいものも、苦手なものも、まだまだたくさんあるけれど。
見方を変えれば、それはもしかしたらとても大切なものになるのかもしれない。
かけがえのない、愛おしいものになるのかもしれない。

「じゃあ…またね」

この、泪のように。

「うん」

傘からにょっと突き出している手を、小さくひらひら振っている雨降り小僧。
その光景に小さく笑うと、私は泪に背を向けて歩き出す。

扉をくぐると、雨は止んでいた。









さぁ、私を始めよう。

まずはありさに会いたい。
会って謝りたい。

そしてちゃんと伝えたい。

“友達になってください”。

拒否されたら?
気持ち悪がられたら?

いいじゃないか、失敗したって。
大丈夫、きっとまた雨は降る。

そしてその雨は、必ず止む。
私は、私のままに生きよう。



さぁ、私を始めよう。
雨は止んだ。

第二話 雨の夢 <完>
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宵闇の夢 ©著者:柚木

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