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2章:雨の夢 (33/34)

そこからはただ生きていた。
目的もなく。

女であることを隠して生きてきたのは、オレがオレを嫌いだからか。
それとも正幸を羨むあまり、正幸になりたかったのだろうか。

「両方、じゃない…?」

泪が囁く。

「真実ちゃんは、辛い過去から逃れたくて、真実ちゃんじゃないひとになろうとしてたんだよ」

きっとね…と泪。

「雨はね、敵じゃないよ」

泪はゆっくりとした口調で続ける。

「雨は冷たいけど…流してくれるから」

過去も、涙も。

「だからね、真実ちゃん…笑っていいんだよ」

もう縛られることはないんだよ。
いつでも、いつからでも、人は変われるんだよ。

どれだけ辛くても、どれだけ苦しくても。

いつまでも逃げていたって、始まらない。
幸せはこない。

だったら開き直って。
そのままの自分で。
何も隠さず。

もう一度始めてみようよ。

失敗したって大丈夫。





雨が流してくれるから。





「ね、真実ちゃん…」

泪の言葉が雨のように、全身に染みていった。
それは今までの汚いものを全て洗い流すように、広がる。

コツンと、泪が額を合わせて微笑んだ。

初めて会ったときから、変なやつだった泪の、笑顔。
それはとても優しい微笑みだった。

「初めてみた、笑ったの」

「僕も」

言われて気づいた。
笑っていた。
私、も…
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宵闇の夢 ©著者:柚木

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