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2章:雨の夢
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そこからはただ生きていた。
目的もなく。
女であることを隠して生きてきたのは、オレがオレを嫌いだからか。
それとも正幸を羨むあまり、正幸になりたかったのだろうか。
「両方、じゃない…?」
泪が囁く。
「真実ちゃんは、辛い過去から逃れたくて、真実ちゃんじゃないひとになろうとしてたんだよ」
きっとね…と泪。
「雨はね、敵じゃないよ」
泪はゆっくりとした口調で続ける。
「雨は冷たいけど…流してくれるから」
過去も、涙も。
「だからね、真実ちゃん…笑っていいんだよ」
もう縛られることはないんだよ。
いつでも、いつからでも、人は変われるんだよ。
どれだけ辛くても、どれだけ苦しくても。
いつまでも逃げていたって、始まらない。
幸せはこない。
だったら開き直って。
そのままの自分で。
何も隠さず。
もう一度始めてみようよ。
失敗したって大丈夫。
雨が流してくれるから。
「ね、真実ちゃん…」
泪の言葉が雨のように、全身に染みていった。
それは今までの汚いものを全て洗い流すように、広がる。
コツンと、泪が額を合わせて微笑んだ。
初めて会ったときから、変なやつだった泪の、笑顔。
それはとても優しい微笑みだった。
「初めてみた、笑ったの」
「僕も」
言われて気づいた。
笑っていた。
私、も…
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宵闇の夢 ©著者:柚木
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