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9章:寒空の下で… (20/21)


そう過去を振り返りながら、足を止めることなく歩き続けた。


タクシーに乗ることすら考えずに、ただひたすらに…

それから俺は、りりとのことを思い返した。





あの店で初めて会ったりりは、第一声に

「なにヲタですか?」

こんな質問をしてきた。


ここから始まったんだ…



りりは何を思い、俺と店外をしてくれたのか…


何を考え、俺が存在している世界を覗いてみようと思ったのか…


それが仕事だから…
そう言われてしまえば、身も蓋もないが、それだけでは無かった気がする。


ショーケースに並ぶフィギュアを楽しそうに眺め、そして購入までした。


変化の第一歩でもある買い物に付き合って、そしてコーディネートまでしてくれた。


そんなりりが、“これも仕事だから…”と思っていたとは、到底思えない。



人生という大きな大きな一本道。

そこにたくさんの枝分れになっている細い道があっても、見向きもせず、前だけを向いて歩いてきた自分…

遠回りなんて無駄なことだと思い、避けて歩いてきた。

その細い道には、自分を成長させるための様々な物が落ちていたのにもかかわらず…




その道から手招きをしてくれた営業部の吉岡さん。

そして俺の手を引っ張り、誘導してくれた“りり”……


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てんびん ©著者:マジハロ

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