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2章:喪失 (8/8)

その言葉に我に返り、「え!?あー、今日迷ってたあのケーキやっぱり食べればよかったーって思ってたの!ごめんごめん」と、その場で考えついた言い訳をした。


「そういう時ありますよね!」


と、言い訳を信じてくれたのか、賛同する秋元さんとは違い、冬馬君は無言で…でも、何かを聞いてくる事はなかった。


「えっと…春さんの誕生日の事だよね?どうしようか」


気を取り直し、春さんの誕生日について3人で話をしていると、玄関の扉が開き、その足音はリビングへと近付いてきた。


「あっ!夏希君!おかえりなさい」

「…うん、ただいま」


小さく呟くと、リビングの扉で止まっていた足は歩みを進め、その方向は真っすぐ…私の元へと1歩、1歩と近付いている。


「…彩、ちょっといい?」


下を俯く私に、夏希が言葉を掛けた。


きっと…クリスマスイヴの時の話だろう。
いつもの様に、逃げてしまおうか…とも考えた。

けど、秋元さんや冬馬君と話をして改めて実感した『1年』というリミット。
このまま逃げ続ける事が、果して正解なのだろうか…。


恐怖心に駆られながらも、誘いに小さく頷くと、ゆっくりと腰を上げ、夏希とリビングを後にした。


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春夏秋冬3 ©著者:みるみる

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