10章:退店 (2/9)

仮眠程度の眠りにつき、目が覚めてケータイをチェックする。

春名さんからの返信はない。

最後の最後に店長のアドレスを教えるぐらいのことはしてくれてもいいんじゃない？
どれだけ知らん顔なの？

本人がこんななのに、まわりに追い込まれたのが本当に理不尽。

もうなにもかもがバカバカしい。

もう、とぶよ。

このまま誰にも何も言わずに辞める。

ちゃんとした辞め方をすることすらバカバカしい。

もうこれっきり。
それでいい。

出勤確認であろう内線からの電話が鳴る度にその決意は固まった。

まおちゃんと凛ちゃんのことだけが気がかり。

こんな結末のために睡眠時間を削ってまで何回も話を聞いてくれたわけじゃない。

だけど、もう私は…

二人にはちゃんと自分の口から説明したい。

だけど二人を通して小島さんや他のスタッフに辞めることが伝わるのは絶対嫌だ。

私はもうこのままなにも言わずに消えたい。

とびたい。