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1章:末路 (1/1)

1章:末路

「私、明日携帯止まりそうなんだよね。」




マキトの指名客、リエ。



たまたま店の近くで会ったのだ。



普通の昼職で、週末だけスナックで働いている。



もう半年近く店には来ていないが、マキトに取っては大切なお客様だ。



リエが風邪をひいたと聞けば、走って風邪薬を届けに行った事もあった。



そんなリエが困っている。



一万五千円あれば、足りると言う。



マキトはなけなしの貯金をおろして渡した。



残額は1万円ほど。


それでもマキトにとってこの1万は心強かった。





―その日の営業終了後、マキトは繁華街を歩いていた。




もちろん帰宅のために他ならない。



が、マキトは目撃してしまった。


同業他店から出てくるリエを。


「レイジ君〜アフター行こうよ〜」



担当らしきレイジという男は困った表情を浮かべた。



「ねぇ〜レイジ君ってば」



「うるせ〜1万5千円っぽっちの会計でアフター行けるワケないだろ。もっと使えば考えてやるよ。」



マキトの手が震えた。
…1万5千円?




「じゃあホテル行こうよ。私、もう600円しかないから、ホテル代はレイジ君持ちだけどね。」



「気をつけて帰れよ。」




強引に店に戻るレイジを怒り気味で見送るリエ。



反射的にマキトは物陰に隠れていた。




自分に嘘をつきお金を借りてまで他店のホストに…。



そうか




友達だと思っていた。



ベストだと信じていた。




結果、他店にハマりホテルを誘う始末。




笑った。



笑ってるのに悔しくて、涙が出た。




その日の夕方過ぎ、マキトはリエの家を訪れた。




「そんなにレイジさんが好きか?セックスしたいか?」




マキトの声は震えていた。




長い間の後、リエは泣きじゃくりながら言った。




「マキトを忘れたかった。マキト、全然私の事好きって言ってくれないから…」




マキトはその日、初めて指名客とセックスをした。



そしてそのまま同伴扱いで出勤した。



リエの隣に座り足を組み、マキトは思った。



忘れたいヤツからお金は借りないだろ。



マキトの売上は、翌月10倍になった。
友営は卒業した。

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ワラシ ©著者:kakeru

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