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1章:末路
「私、明日携帯止まりそうなんだよね。」
マキトの指名客、リエ。
たまたま店の近くで会ったのだ。
普通の昼職で、週末だけスナックで働いている。
もう半年近く店には来ていないが、マキトに取っては大切なお客様だ。
リエが風邪をひいたと聞けば、走って風邪薬を届けに行った事もあった。
そんなリエが困っている。
一万五千円あれば、足りると言う。
マキトはなけなしの貯金をおろして渡した。
残額は1万円ほど。
それでもマキトにとってこの1万は心強かった。
―その日の営業終了後、マキトは繁華街を歩いていた。
もちろん帰宅のために他ならない。
が、マキトは目撃してしまった。
同業他店から出てくるリエを。
「レイジ君〜アフター行こうよ〜」
担当らしきレイジという男は困った表情を浮かべた。
「ねぇ〜レイジ君ってば」
「うるせ〜1万5千円っぽっちの会計でアフター行けるワケないだろ。もっと使えば考えてやるよ。」
マキトの手が震えた。
…1万5千円?
「じゃあホテル行こうよ。私、もう600円しかないから、ホテル代はレイジ君持ちだけどね。」
「気をつけて帰れよ。」
強引に店に戻るレイジを怒り気味で見送るリエ。
反射的にマキトは物陰に隠れていた。
自分に嘘をつきお金を借りてまで他店のホストに…。
そうか
友達だと思っていた。
ベストだと信じていた。
結果、他店にハマりホテルを誘う始末。
笑った。
笑ってるのに悔しくて、涙が出た。
その日の夕方過ぎ、マキトはリエの家を訪れた。
「そんなにレイジさんが好きか?セックスしたいか?」
マキトの声は震えていた。
長い間の後、リエは泣きじゃくりながら言った。
「マキトを忘れたかった。マキト、全然私の事好きって言ってくれないから…」
マキトはその日、初めて指名客とセックスをした。
そしてそのまま同伴扱いで出勤した。
リエの隣に座り足を組み、マキトは思った。
忘れたいヤツからお金は借りないだろ。
マキトの売上は、翌月10倍になった。
友営は卒業した。
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