1章:X'mas (4/4)

黒いコートの人は女の近くになると、少し早足になり、思い切り女にぶつかった。






｢･････っつ･･｣




女はぶつかられた事と同時に感じた腰の違和感で振り向き、顔を歪めた。



女は黒いコートの人を見ると、しばらく眉間にシワを寄せ相手を見つめた後、舌打ちをした。




｢･･･なんで今なんだよ。
･･･くそっ｣




｢･･････悪くない･･･
･･･が悪いんじゃない･･･お前が･･･
お前のせいで･･･｣




黒いコートの人はボソボソと聞き取れないような声で呟くと、震えながら手に持っていた物を地面に落として走り出した。



｢･･･なんだよ。
逃げんのかよ･･･
･･･にしても、タイミングわりぃなくそっ･･･｣




女は逃げていく黒コートの人が落とした物を拾い、コートに隠すようにしまうと、腰に手を当てながらまた歩きだした。





そして、人混みを逃れるように薄暗い路地へと入っていった。





少し降り積もった真っ白な雪の中、点々と女の歩いた後に赤い染みがついていった。