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2章:友達の境界線 (3/5)

いつもこんな感じで、私達はじゃれあっていた。 
いつもと何も変わらない関係。 

心地好く、気楽な関係。 

縛られるわずらわしさも、他の異性への嫉妬も、離れる怖さも何もない。 

…そんな関係。 






ふと、 



目が合った。 







優太のクセ毛を生かして、パーマをかけている前髪。 




その下にあるくっきりした二重に大きな栗色の瞳。





少し上唇がぽてっとしている唇。 




…今までに無い、胸がキュッとしめつけられる甘酸っぱい感覚。 


一瞬だった。



…軽く、



本当に触れているかも解らないくらい軽く唇を重ねた。


優太は大きな瞳をさらに大きく開き、私を見つめた。

『…。』


「…。」


しばらくの無言の後、優太はわざとおどけたように唇に手を当てて、


「…いやん。責任とってよね!」

と、なぜかオネエ言葉でリアクションをとった。

『なんだそりゃ。』

「…だって、沙羅が急に…発情するから…お酒って恐いわ〜」

『…いーじゃん。酒がきっかけの出会いで、酒の力での告白。私達っぽくて。』

優太は私の瞳をじっと見つめている。


「告白?まだしてなくない?」


…たしかに。 


私はこくりと頷いて、口を開きかけたとき、 


「沙羅。好き。」


「俺と付き合って。」



優太がそう言うと恥ずかしさを隠すようにそのままギュッと私を抱き締めた。 


ふんわりと優太の整髪料の香り、青リンゴの香に包まれて思ったより広くしっかりした肩に、私は顎をちょこんと乗せて


…あぁ…。 


…なぁんだ。


“友達”だから心地好いんじゃないんだ。 






“優太”だから心地好いんだ。 





私は居場所を見つけた安心感に包まれて、ゆっくり目を閉じた。

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きみの名を呼ぶ ©著者:金木犀

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