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6章:擦り減ってく心…
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いつしか、喧嘩になるたびにいつも言うようになってしまった。
『…うるさいなぁッ!…早く家に来てって言ってるじゃん!!』
「沙羅…もう少し待ってくれよ。まだ仕事があるんだ…」
『お腹痛いの!!早く!』
私は生理痛のイライラと痛みを、優太にあたり散らしていた。
「…なるべく早く終わらせて薬買っていくから…な…?」
『…もういいッ!
…別れよ!』
私は一方的に電話を切り、ベッドの中に潜り込み湯たんぽを下腹部にあてて、なんとか寝ようと目をつぶった。
…電話を切って少し冷静になると涙が出てきた。
…優太は悪くない。
何も悪くないのに、なんですぐ喧嘩すると私はこうなんだろ…。
ウトウトと生理痛の痛みより眠気が勝ってきたころ、微かに玄関の鍵の開く音がした。
…良かった…。優太が来た…。これで安心して寝れる…。
優太の存在が私にとっての安心する源なのに、優太に優しくしてもらいたくて、酷いことを言ってしまう。
私の優太に対する愛情は歪んでいる。
それでも優太は変わらず優しい…。
…優太…優太…。
…ごめんね。
そっと沙羅が寝ている寝室を開けた。
沙羅は幼い子供のようにあどけない顔をしてスヤスヤと眠っている。
布団からでている腕をゆっくりと布団に入れ直して、柔らかい頬をそっと撫でて涙のあとを拭いた。
…俺は
…声を殺して泣いた。
…いつからだろう。
…沙羅の着信音を聞くと、心に影ができるのは…。
…いつからだろう。
…沙羅の怒った声が、憂鬱に思ってしまうのは…。
…いつからだろう。
…沙羅の笑った顔を見なくなったのは…。
…沙羅を想えば想うほど、沙羅の心を見つけられなくなった。
…もう。
…俺自身の心も
見つけられなくなった…
俺は寝室を出て、洗面所で顔を洗った。
冷たい水が少し気分を晴らしてくれた気がした。
…
…そうだ。
…明日はお互い休みだし、近くの公園に散歩でも行こう。
お弁当作って。
それとも沙羅は他に行きたいとこあるかな…。
俺は明日の休日を楽しく思い描きながら、沙羅が寝ているベッドに彼女を起こさないように入り、眠りについた。
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きみの名を呼ぶ ©著者:金木犀
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