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4章:最初の“別れよ”
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部屋を見渡せば、優太の存在が部屋の至るところにある。
まだ私が1人だった頃は、この部屋は寝に帰ってくるだけの場所だった。
家での一人飲みなんてしなかったのに、優太の“色”で部屋が染まっていくたびに居心地のいい場所になっていった。
ふと、最近の優太のことを思い返してみる…
最近は私の仕事でのトラブルばかりでイライラしては優太に話を聞いてもらっていた。
…最近私はイライラしては、優太にあたりちらす。
…でも優太に話を聞いてもらっているからストレスがたまらずに、また仕事で頑張れているのは確かだ。
…なんでもっと優太に優しくできないんだろう。
…大切な存在なのに…。
時計を見ると、さすがに優太の仕事は終わっているだろうと思い、私は酔った頭で優太に電話した。
―…♪〜♪〜…―
繰り返すメロディコールのあとに、留守番電話に変わった。
私は少しイラッとしてきた気持ちを流し込むように酒を飲んでもう一度、電話した。
―…♪〜♪〜…―
さっきと変わらない私の好きなアーティストの曲が虚しく流れる。
諦めて電話を切ろうとしたときに優太の声が聞こえた。
「―…もしもし?沙羅?どした?なんかあったか?」
なんで優太はいつも最初に、何かあったか?って聞くんだろ…と、また気持ちが高ぶってくるのを押さえながら話そうとしたが、不機嫌まるだしの声になってしまった。
『…仕事は?』
電話の後ろの騒つきからしてオフィスではない、外にいるんだろう。
「終わって今、上司に付き合わされて飲んでる。」
『…あっそ。
…家に来てくれるかと思ってた。』
「行こうと思ったんだけど、次の仕事の打ち合わせがてら飲みに行くことになって…」
優太のすまなそう声が聞こえてきたときに後ろから別の声が聞こえてきた。
―…ありがとうございました〜!また飲みに来てね〜!…―
―…またね〜愛ちゃん…―
猫なで声と野太い声が聞こえた。
『…ふ〜ん。キャバクラ?』
「あぁ。ゴメン。付き合いでさ…」
『いつも言ってんじゃん!キャバクラ行くなら行くって連絡してって!』
「連絡しようと思ったんだけど、上司の前じゃできないし…沙羅、報告してもどっちにしろ機嫌悪くなるだろ?
沙羅さっき機嫌悪かったから余計に悪くなると思って…ゴメンな。報告しなくて。」
図星なことと、私に非があるのに優太が謝ったことに頭が、カァッと熱くなった。
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きみの名を呼ぶ ©著者:金木犀
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