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3章:一人目〜78歳・女性の考察
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3章:一人目〜78歳・女性の考察
酷く寂し気な表情で、老婆は語り出した。己が先程まで震える手で書き記したメモを読み返しながら、ともすると聞き漏らしてしまいそうな微かな声で。
「長生きしたって一つも、一つたりとも良いことなんてありはしなかったですよ。ええ。」
生きてきた年月、それに伴う記憶が今彼女の脳内を埋め尽くしているのだろう。
一言話す度に、真っ白なはずの部屋の壁がくすんでいくようだった。
「友達は先に死んでしまうし、ほらあたし...結婚もしてないから...守るもんなんて何一つないのよ。
死ぬことも器用に出来なくてただ生きているだけの穀潰しなんてねぇ、ほんと...あたしゃ何のために生きてるんだろう。って最近よく思うんですよ。」
老婆は自分自身の言葉に段々と熱を込めていくようだった。頼り無げだった語気が確信めいたものに変化していく。
私は無意識のうちにホワイトボードと対峙した。そして、手に持ったペンで白を塗りつぶすように
『穀潰しに生きる価値なし』
と書き込んだ。
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