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2章:議題
紙とペン先がぶつかる無機質同士の作り出すリズムと、それぞれの呼吸の微かな音しかしない部屋で私は私の時間を持て余していた。
手に持ったペンを弄くり回しながら、ふと自分の後方にある壁とは違う冷ややかな固さを感じて振り返った。
そこには、ホワイトボードが関所のように立ちはだかっており、上方にはペンで大きく文字が書かれていた。
『最後の議題』と銘打たれたその表題を黙読し、私は自分の喉の奥が急激に乾燥していくのを感じた。
信じられない。
信じたくなどない。
空気が薄く感じて、思わず呼吸を止めてしまった。半開きの口は冷えた空気が僅かに出入りし、唇を干からびさせていく。
私は自分の唾液を飲み下すことさえ億劫になり、やっとのことで掠れた声を絞り出した。
乾燥によって痰が絡み、益々哀れみを帯びた声色になってしまったが構うことは出来ない。
そこに書かれた文字の意味は、私の頭蓋をかち割った挙げ句脳髄を掴み出されるような衝撃を味わわせたのだ。
「『白川裕子の自主的な臨終方法について』...。」
議題として記された個人名は、紛れもなく私の名前であった。
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