私の記憶など当てにはならないかもしれない。
　６０歳も越えると若い頃、大切だと思っていた事を忘れてしまっていたり、必要では無い事を妙に思い出したりする。
　記憶は曖昧で繊細で、だからこそ大事にしなければいけないのだと口では言えても当の本人は、そうはいかないものだ。
　今回、本を書く機会に恵まれてペンを取ってはみたが、政府公式記録と記憶が当て嵌まらず、数少ない戦友と話しながら纏める事とした。
　二つの紛争と言う名の戦争で、生き残ってしまった私の人生は栄光と挫折に溢れている。
　美化され閉じた記憶の箱を開け、真実の過去を直視した後には、執筆をためらいがちだった私の心は洗われたようだった。

　応援して下さった出版社や政府関係者、戦友、そして記憶となったディートに、心より感謝したい。


　　退役中将　ウェイン･ガイガー
　　　　　　2083.04/27