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6章:真実 (5/5)

―どうして?何かイタズラでもしたの?―

私は軽い気持ちで聞いた。

―チサが悪い子だから、ママ怒るの。
ママ、チサなんか産まなきゃよかったって言うの。 チサ、いもーとのゴハン内緒で食べちゃったから……―

女の子はチサというらしい。

私にはわけがわからなかった。

いもーとのゴハン内緒で食べちゃった?

それくらいで怒る親なんているの?

―ママごめんなさいごめんなさい…ごめんなさいっていっぱい謝るんだ。



でもママはまだチサに怒ってるみたい…

だからチサ…ママの顔…思い出せないの。―



女の子は大きな目に涙を一杯溜めていた。


よく見ると女の子の腕や足は枯れ枝みたいに細くて、誰かに殴られたような痣や煙草を押し付けられたよーな跡がたくさんついていた。


―……


私はそれが何を意味しているのか、わかってしまった……。


軽い気持ちで聞いたことを後悔した


私はチサちゃんを抱き締めた。


―つらかったね。ママの顔思い出せたらいいね…―


きっと…いや、間違いなくチサちゃんは母親の虐待によって死んだんだろう。

たしか、何ヵ月か前に、この近所で起こった児童虐待死のニュースを見た記憶があった…。


母親に虐待されても
こんな風にされても…


ママのことまだ好きなの?チサちゃん…




チサちゃんは母親の顔を忘れてしまったけど、いつかママが迎えにきてくれると信じていた…



だけど
私はわかっていた。
チサの母親がチサを迎えにくることなんて永遠にないってことを…



だけど言えなかった。




チサちゃんは今日も待ち続けている。


大好きなママが自分を迎えにきてくれるのを。




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ずっとそばにいる ©著者:なち

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