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8章:10年前の真実
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8章:10年前の真実
―…目が覚めると、そこは病院だった。
私は直ぐに、自分の子供…りょうやの安否を聞いた。
りょうやは同じ病院の小児科に入院していて、喉の軽い火傷などで私より軽症だと言う。
良かった…。
私自身も火傷などで済み、あの大きな火事にしては奇跡的に軽症だそうだ。
日付を見ると、火事がおきてからもう3日が過ぎていた。
どうやらあの火事は放火の可能性が高く、私の回復とともに警察の人が私の病室に来た。
そして、警察の人が教えてくれた。
火事の中なぜ私たちが助かったのか。
勇敢な民間人の男性が私たちを抱えて助けだしてくれたと…
男性の遺体の損傷はとても激しく、私とりょうやが助かったのは本当に奇跡だと。
そして、その人の身元がわかったので写真を見せてもらえた。
「…お知り合いですか…?」
私はあふれ出る涙で視界が歪み…
かろうじて震える唇で声を絞りだして答えた…。
「……子供の…父親…で…す…」
…涼哉。
私…。
知ってた。
涼哉が大学受験したの。
だから…涼哉の夢の重荷になりたくなくて…
…あなたとの新しい命をお腹に宿して…
冬の寒い日に、あの街から出た。
今思えば、ただ私は怖かった。
…もし涼哉に拒絶されたら…と。
おかしいよね。
涼哉はそんな人間じゃないのに。
…涼哉を信じきれなかったのは私…。
あの時、10年前のあの日に…涼哉を信じてすべてを話していたら…
そしたら…
そしたら…
涼哉…。
それから2ヶ月後…私と、りょうやは無事に退院できた。
そして私とりょうやは夏も終わりに近づいてるある日、お墓の前で手を合わせていた。
「…ママ。」
「なぁに?りょうクン。」
「…僕たちを助けてくれたお兄ちゃんと…僕ね、公園で遊んだんだ…。」
「…そう…だったの…?………そっか…」
「ママ…泣かないで…ママまで泣いたら僕も悲しくなってくる…」
私は優しく首を振り、りょうやをそっと抱き締めた。
「ママ…悲しくて泣いてるんじゃないよ…」
りょうやは小さな腕で必死に私を抱き締めてくれた。
―…ニャァ…―
突然猫の声がしたので顔をあげると、墓の脇から黒猫が飛び出してきて―…
その拍子に…
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黒の扉 〜トパーズ〜 ©著者:金木犀
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