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4章:同じ名前の少年
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…俺は久々の二日酔いに頭だけでなく、胃までも痛くなってきた。俺は自嘲気味に笑って呟いた。
『……酔った勢いで枕なんて…ハハッ。新人かょ。』
たしかに枕なんてこれが初めてではない。
ホストを始めた1、2年は若さと、ホストと言う非現実的で煌びやかな世界に酔いしれて…
金と、酒と、女に溺れていった。
しかしいつからか、朝目覚めたときに隣に寝ている無防備な女の子に対して、何とも言えない罪悪感を抱くようになってから、枕営業はきっぱりやめた。
…罪悪感。
もちろん、客も俺との時間を高い金を払って買い、時には淋しさをまぎらわせたり、自分の理想化した俺との夢を見る。
成り立った関係だ。
と思っている客が殆んどだった。
だけど…まとわりつく、罪悪感。
…自分への?
…相手への?
…それとも。
そんなことを考えて駅までの道を歩いていた。
―…ニャァニャァ〜…―
聞き覚えのあるような、無いような猫の鳴き声に顔をあげると…
『…お前…。』
黒々とした艶のある毛並みに、左右違う瞳の色…そして2本のしっぽ。
間違いなくあの黒猫だ。
黒猫は、俺を見ながら赤いリボンの首輪の鈴をチリチリ鳴らし、塀の上から俺を見つめていた。
俺は黒猫相手に恨めしそうな目をして言った。
『…お前なぁ〜。…お前のせいで俺は二日酔いなんだぞ〜。…ちょっと来い。』
俺は手を伸ばしてヒョイと黒猫を抱き上げてウリウリと顎の下を撫でた。
―…ニャ〜ァ…―
黒猫は俺の腕の中で気持ちよさそうに鳴いた。
俺は黒猫になんか餌でもやろうと思い、黒猫を抱きながら近くにコンビニがないかと歩きだした。
少し歩くと公園があってなんとなく目をやると少年が1人でサッカーボールで遊んでいるのが見えた。
…俺もガキの頃はああして遊んでたなぁ。
なんて見ているとボールが道路に転がっていき、そして少年はボールを追い掛けて…
少し離れたところにはトラックが…!!
俺は、咄嗟に黒猫を公園の草むらに起き、ありったけの力で走った…!
走っていくなか、すべてがスローモーションに感じた。
迫ってくるトラック…
立ち尽くす少年…
…そしてありえない事に、さっきの黒猫が俺より早く少年とトラックの前に疾風のごとく走り抜けたように見え…
俺は必死に少年に手を伸ばした…!
『―…ッっ!…あぶなツッ!…』
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黒の扉 〜トパーズ〜 ©著者:金木犀
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