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3章:ものがたり。 (8/9)

自分が入れられている箱が
どうやらコインでできているものではない、
ということは、時間を積み重ねていくことで、わかることができました。


それで充分だったはずなのに、
石ももともとは魔女です。
欲深いのです。


「あなたがコインの箱も持っているのは、薄々気付いてはいたけれど…

どうして、コインの箱はいつでもどこでも開けるのに、私の箱は開けてはくれないの?

私、森じゃない所で開けてもらったことがないわ。
魔女たちのように、あなたと歩いたりしたいの。」



「コインのはこのなかには、どうでもいいものがはいっているから、あけてもいいんだ。あなたはだいじだから、あけないの。
がまんしていてね。」


ある日、森で少年は箱を開け、石に語りかけました。


石は、箱を開けてくれたことに喜びながら、「また、森なのね。」と落胆します。


「もりでしかあけてあげられなくって、ごめんね。いつか、だれもいないところにいこう」


石はなんとなくわかっていました。

魔法使いが石を持つことは罪なのです。

魔女に知られてはならない。

「何よ、あの汚い石」

「あんな石を大事そうに持つ魔法使いなんて要らないわ」

「私こそあの魔法使いの宝石だと思うわ。」

魔女たちの心ない言葉に、
少年も、石も、傷付いてしまうのです。


少年も石も夢見ていました。
いつか少年が魔法使いでなくなった時、
石も少年と同じ姿で寄り添えることを。


「だれもいないところ」に行けば
魔法使いであることを一瞬でも忘れられる。石を傷付ける魔女もいない。
すぐには行けない。必ず行ける。



でも、石は自信がなかったのです。
少年が、宝石でもなんでもないこんな石ころを、どうしてこんなにも大切にしてくれるのか。

魔女だった頃のように、コインをあげることもできやしないのに。

箱の中で、大人しくしていることしかできないのに。
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「あなたの彼女」 ©著者:美桜

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