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7章:疑心 (4/7)


「そんじゃあね〜明日店で♪」

梨香と別れて、家まで歩く。

大樹は最近「タクシーに乗れ」って騒ぐようになった。


例の手紙のせいだ。


最初は手紙だけだったのに、最近は写真付きだ。

マンションに入るところとか、店に入るところとか。

多分、頭がオカシイ客だろう。


不思議と恐怖感はなかった。


ヘルスで働き始めてから何度かあったし、出会い系で泊まり歩いてた頃は、もっと怖い事が沢山あった。


大樹は「なんかあってからじゃ遅い」って怒るけど。


マンションに着いて、鍵を探す。
オートロック。


後ろから、人の気配。

アタシの真後ろで止まる。

思わず振り向いた。


「こんばんは〜今日も寒いですね。」

笑顔で会釈をしてきたのは、お隣のおばあちゃん。


「あ、こんばんは〜ほんと寒いですね。」


可愛いおばあちゃん。いつも身なりをきっちりしていて、会うと必ず声をかけてくれる。

アタシが住む、3年以上は前から住んでるはずだ。

ここ一年位、旦那さんの姿が見えない。
多分亡くなったんだろう。

ちょうど一年位前に、挨拶しても、何度か無視された。

無視というより、気がつかなかったんだろう。
いや、つけなかったと言うほうが正しいかもしれない。

虚ろな顔をして、目の前を通り過ぎてた。

そんな彼女はもういない。寂しさに慣れたのだろう。


アタシが大樹と結婚したら・・・

そんな寂しさにも慣れなきゃいけないんだろうな。


「あら、入らないの?」

振り返り、彼女が言う。


「あ、はい。郵便物を取るの忘れて。先にどうぞ。」


「じゃあお先に」

軽く会釈をして、入って行った。

―――嘘だった。
アタシは何だか二人っきりで、エレベーターに乗るのが嫌だった。

世間話が苦手だ。


彼女がエレベーターに乗ったのを見計らって、鍵を出す。


瞬間、アタシの視界は真っ暗になった―――。


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―深愛―果てにあるもの ©著者:まいん

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