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2章:岐阜県奥美濃 パート2 【ひるがの高原】 (1/13)

2章:岐阜県奥美濃 パート2 【ひるがの高原】

【ひるがの高原 牧歌の里】

東海北陸道郡上八幡ICから高山方面へと、上り勾配の道路をぐんぐんと上がってひるがの高原を目指す。

辺り一面、夏山のゲレンデも擁した山岳地帯に囲まれてくると、清涼な外気が際立ってきたのか、全開にした車内のクーラーすら肌寒く感じてしまう。

天気は快晴のまま、山の端っこにも入道雲らしき重たい雲が見当たらないことから、夕立などのゲリラ豪雨に見舞われる心配はなさそうだ。

ひるがの高原SAで休憩がてら外に出てみれば、標高約千mの爽やかな風が早速肌を撫でた。

盆地で張り切っていた日差しもいくらクールダウンしたようで、赤裸々に降り注ぐ快適な太陽エネルギーが弾むようなパワーを与えてくれる。

隣接のひるがの高原スマートICを降りて約三km、最初の目的地「牧歌の里」に到着した。

ここは季節の花々が華やかに彩る花と緑のテーマパーク。

併設した牧場の動物達とも触れ合える人気の高原リゾートだ。

実はモネの池や郡上よりも、こちらの方をメインイベントに考えていたのは、豊かな自然に育まれた動植物と直に繋がることで、疲れた心を癒したかったからだ。

最初に記した通り、自分の暮らしの身近にある高原リゾートも動物との触れ合いは充実しているのだが、同じ高原でも全国津々浦々楽しみ方は違うもので、隣県の環境はどんなものなのか、ちょっとした偵察気分で潜入してみることにした。

もっぱら、情報誌にアップされていたモルモットやウサギが可愛いすぎて、彼らに一度会って触ってみたいと言った、推し活的な心情もあった。

駐車場はテーマパークらしく広大で、平日の午後でも入り口付近はびっしり枠が埋まっていたが、奥の方はガラガラだ。

この時期、連休のみならず週末でも全体が自家用車に埋め尽くされ、下手をしたら駐車場待ちなんて最悪なパターンに陥っていたかもしれないから、平日休みはラッキーだ。

緑したたるなだらかな草原と遠方に連なる山々の悠揚とした風景を軽やかな足取りで楽しむのは、高原における唯一無二のエンターテイメントだ。

入場料を支払い、入り口ゲートをくぐる。

そこから一歩足を踏み入れれば、まるでおとぎ話の中に入り込んだような風光明媚な景色が広がっていた。

園の約半分を閉めるお花畑エリアの豪華な彩りや、それを庭園とした雅趣に富んだ教会。

晴天の青空も相まって、見上げれば、彼方に稜線を連ねた白山連峰の堂々とした自然の情緒が、園内の幻想的な絶景をいっそう引き立てている。

ゲートの裏側では、ハロウィンのようなオレンジ色のカボチャのひな壇が迎えてくれ、中にはタモさん風サングラスに黒塗りされた目で薄く笑んでいたものもあって、少し笑ってしまう。

笑っていいともだけに。

園内マップを頼りに早速動物触れ合いエリアへと足を運ぶ。

お花畑に沿って歩いてみれば、足下には精彩なグラデーションに奏でた花々が小川のように這い巡る。

その王侯のごとく豪華な色彩を縫うようにして、のどかに走るロードトレインの優しい汽笛とその風景が、心にのんびりとした余裕を与えてくれる。

お花畑エリアと動物ふれあいエリアは水路に隔てられ、その突き当たった場所では、雅やかに泳ぐ錦鯉の群れが見られるという。

左脇に広がるお花畑から牧舎に向かって右に折れ、さくら橋を渡った道すがら、牛を曳いて歩いてくる女性の飼育員さんに、にっこりと声を掛けられた。

「今動物のお散歩やってます。

いかがですか」

早速出会ってしまった『どうぶつのおさんぽ』と言うアトラクション。

十二時半に牧舎を出発した日替わりの動物達が、園内各所に出張して来場客をもてなす企画で、一日にこの時間のみ行われるそうだ。

牛は茶色い毛をしたジャージー牛で、その巨体とは裏腹な、見ず知らずの人間に気安く触れられても無垢に振る舞う殊勝な所作に愛着を感じる。

さくら橋を渡れば、木製の柵で囲まれた放牧場に放たれた、多種類の動物達ののんびりとした動作を両脇に観察できる。

鼻腔に篭る草いきれと、澄んだ青空に飛び交うそれぞれの動物達のソフトな鳴き声の晴れがましさに心が踊る。

左側がアルパカや羊達で、右側はさっきも入場一番によしよし出来たジャージー牛の仲間だ。

まずは後者に寄ってみて、四肢を折り畳んでくつろいでいた、目の前の一頭に柵越しに手を伸ばす。

いきなり頭に触れると、相手は一瞬ビクッと顔を震わせたが、すぐになついたように柵の間からこちらに鼻を伸ばしてきてくれた。

かと思えば俺の手を振り払うようにして草を食み始める。

その豪快な食べっぷり。

旺盛に動く頬、何度も繰り出される舌を見つめるだけでも、こちらとしては微笑ましい。
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俺のひとり小トリップ記 ©著者:ベル

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