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1章:手
閉じた目を空けると、そこは一面白い何もない空間。
当たり前のように、両手の平を見つめる。
右手に指が5本。
左手にも指が5本。
当たり前だ。
もし左右の指の数が違ったら。
刀鍛冶の親父は、刀を打つ時に指を1本失ったと言っていた。
飛ばした指はどこへ。
何処へ。
親父に問うたら失った物に興味などない。
どうでもいいと言っていた。
確かに。
今の医学では失った指を接合する事などできぬ。
そんな時代のお話し。
喉の乾きを潤すため、井戸の水を汲み上げる。
月明かりしかない空には、満月。
月は不思議な輝きで、こちらを見つめていた。
カタカタと車輪が転がる音がした。
その音の方に目を配ると、大八車を引きながら、越後の十兵衛と言うこの界隈では有名人が走ってきた。
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