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2章:第一章
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「まさか、無くしたんですか?」と若干心配した様子でカナメが言っていると──。
「わりい。あったわ」ケータイは、なぜかスーツの内ポケットではなく外ポケットから出てきた。「そう言えば、さっき……」俺はさやかとケータイの番号を交換したのを思い出す。
「どーしたんすか、何かあったんすか」
「いや、別に──」俺はケータイをいじりながら逆にカナメに訊ねる。「で、お前の方こそどうしたんだよ──俺を探してたんだろ?」
「ああ、そうっすよ」再び何かを思い出した様子でカナメが言った。「いやあ、なんか今店にゆうきさんの事指名したいって女が来てるみたいで──店から電話があったんすよ」
「えっ、うそ?」
「いや、まじっすよ」
「誰だよ、それ?」とさらにケータイをいじりながら訊ねた。ケータイには、着信が何件か入っていた。その中にはカナメのものからと、あと店からのものもあった。
「いや、誰って言われても、俺は見てないんで──とにかく二人組みの女みたいっすよ」
「マジかよ? まさか……」俺は息を飲む。「なあ、そいつら変な仮面して無かったか、目と鼻だけ隠すようなやつで、仮面舞踏会で使用するような?」
「いやいや、そんなのしてないっすよ、多分」と真顔でこたえるカナメ。
「つうか、アニソンの歌手じゃねえか、そいつら? そんでもってロリ系のドレスなんか着て」
「ドレスなんて着てないっすよ、叶姉妹じゃあるまいし──って言うか、それってClariSでしょうが! ClariSなんかくるかよ、ホストに!」
「え、来ないの?」
「来ません来ません」カナメがガブリを振る。それから焦りだした様子で言った。「──って、そんな事より、戻りましょうよ、早く」
「ああ、そうだな。じゃあ帰ろうぜ」
そう言って、俺達はあるき出した。もはや中央通りは先程よりも人影が少なくなっていた。カラ館の前でゲロを吐き散らしていた若者達の姿も既になく、客引きも残っているのはほんの僅かだった。
夜はさらに深さをましていく。けれども、この街はまだ眠らない。無数に建ち並ぶ雑居ビルの中で開かれる盛大なパーティーはこれからがクライマックスなのだ。
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