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「私、好きだった人を殺したのよ」
富美子は生前、同室の受刑者達によくそう話をしていた。
「はあ?好きな人殺すなんて意味わかんねーから」
メグミは眉をひそめる。
彼女は覚醒剤の罪で服役をしていた。
14歳の頃から窃盗や覚醒剤使用を繰り返し、少年院も含めて、塀の中での生活の方が長くなってしまった。
「後悔してねえの?」
「してない」
富美子は即答をした。
「すげえなあ。あたしは好きな人殺そうとは思わねーよ。
好きすぎて自分のものだけにしたかったってこと?」
「そうよ」
「あたしの地元の先輩も昔彼氏刺してパクられたけどね。
詳しくは知らないけど、あんたと同じような理由だったような気がする。
未遂だったし、もう出てきてんじゃねえかな」
「あなたには理解できないんじゃないかしら。
それほど人を好きになったことないでしょう」
「いや、好きすぎておかしくなりそうでも普通は人殺さねえだろ。
ガハハハハ」
富美子は無言で俯いた。
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